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どこかに忘れものをしている
思いに駆られて
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窓を走る
雨粒の
青白い筆致を
読みあげていた
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影しか見えなくなっても
体温を感じとれて
しまうのは
何のためにゆるされた
ちからなのか
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冷めたコーヒーの
静かな香り
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きみの背中に
こぼれたひかり
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すべてが明日へと
急いでいくなか
留まろうとする
ものたちと
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聴こえない
祈りに
こころを澄ましている
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5月になりました。ぼくの暮らしている東京は、
春を通り越してもはや初夏のような陽気です。
あなたの町には今、どんな風が吹いていますか。
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今回のお便りでは、沖縄と東京で続いてきた個展がひと段落した
その話題を書こうかなと思っていたのですが、
どうしても優先して書き留めておかざるを得ない、
そんな出来事があったので、記してみます。
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実は、学生時代からの友人であり、朗読ライブでご一緒する企画を進めていた、音楽家の sawako さんの訃報が届きました。
朗読ライブの企画のみならず、ポエトリー・リーディングの音源制作もやろうと盛り上がり、次の打ち合わせの候補日を出すねと言われて、待っていたもののずっと返事が返ってこなくて。
おかしいなと思っていたところに今回の知らせが突然届き、正直言って、彼女の死を受け止めきれていません。まだ彼女から「遅くなってごめんね」と候補日の返事が返ってくるのを期待してしまっている自分がいます。
ひとりのひとが、この地上からいなくなるということ。それが自分にとってどんな意味をもつのか、咀嚼するにはもう少し、時間がかかりそうです。
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このような経緯から、昨年10月に延期ということでお伝えしていた、以下のライブは開催自体が中止となります。リスケの開催日時を楽しみにしていただいていた皆さん、申し訳ありません。このような理由での中止報告となり、ぼく自身もただただ無念でなりません。
(sawako さんの体調不良により昨年10月のライブが当日キャンセルになりましたが、実は病状が発症したのがこの週だったようです)
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「だいちゃんの詩には、ぜひわたしの音をつけたい」
ある日のカフェでそう話してくれた sawako さんの、子どもみたいにキラキラした眼がまぶしくて嬉しくて。
年明けから入退院繰り返されているなかでも、「だいちゃんのことばに音をつけたいってずっと思ってる」と最後まで言ってくれていました。
それがいったいどんな「音」になったのか、もう一生聴くことができないと思うと、なんとも言えず、目頭だけが熱くなってきてしまいます。
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sawako さん、
そちらは よいところですか。
ひかりは あたたかですか。
とおくへ行ってしまった とみんな言うけれど、
なぜかわたしには ますますあなたが
近くにいるように感じられて しかたがないのです。
あなたがつけてくれる 音を
これからずっと想像しながら
わたしは詩を書いていくのでしょう。
いつかその答え合わせを
笑いながら一緒にやりましょう。
愛しています。
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最後に。sawako さんの楽曲をご紹介して終わりにしたいと思います。日本を代表するアンビエントミュージシャンの一人であり、世界各国のリスナーから愛されている彼女の音楽は、これからも響き続けて、ひとびとの深いところを潤していくに違いありません。
5月のしずかな朝に、眠れぬ夜に。ぜひ聴いてみてください。
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それでは来月もここで、お会いしましょう。
あなたの今日が、美しい一日になりますように。
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― まないより(@daisukemanai)
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p.s.