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彼女は森のなかにいた
大きなケヤキの木陰の下
ひざを抱えて 腰かけて
雪解けの小川が一生懸命
覚えたてのうたを歌うのを
じっと見守り聴いていた
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彼女は真っ赤な
ハンバーガー屋さんのなかにいた
誰に気づかれることもなく
夜の冷たい椅子に腰かけて
大人たちが飲み込むコーヒーに
孤独の色を見つめていた
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彼女はわたしのなかにいた
一番深くて
静かなところに
風も小川もコーヒーも
道端のマンホールさえ
語りかける言葉があること
わたしのなかにも
見知らぬわたしの
声があること
彼女だけが忘れずに
ただじっと
沈黙をうつわにしている
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― ミヒャエル・エンデ『モモ』に寄せて
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▢ もくじ
「時」の探究者としてのミヒャエル・エンデ
トークイベントと朗読ライブのお知らせ
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こんにちは、まないです。ようやく陽射しも落ち着いて、
秋の訪れが楽しみな9月のはじまりですね。
あなたの 8 月は、どんな一ヶ月だったでしょうか。
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ぼくは8月24日に35歳の誕生日を迎えました。
やっぱり誕生日って、ひとつの区切りっていう感じになりますよね。
34歳の一年間、プライベートではそれはもう大変な日々だったので、
「34歳の自分、ほんとうにお疲れ様。体験してくれて、ありがとう」と
そんな気持ちでひと息ついてるこの頃です。
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そんな自分へのご褒美として、『モモ』『はてしない物語』で知られる
ミヒャエル・エンデの思想にどっぷり浸かる二泊三日、
その名も「エンデ・キャンプ」に参加してきました。
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ミヒャエル・エンデのプライベートな手稿、手紙、原画が
実は一番コレクションされているのが、日本の長野県にある黒姫童話館で。(!)
その黒姫童話館を舞台に、エンデとも実際に親交のあった研究者の方々も招きつつ、
エンデの思想と祈りを、今に読み解く、そんな贅沢な二泊三日でした。
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多様な参加者の皆さんとの対話、ワークショップ、そして詩作の時間。
エンデの物語と思想をうつわにして、いろんな想いが発酵した二泊三日でした。
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エンデはやっぱり、ほんとうの「時」を見つめたひとだったと思うのです。
その「時」は、過去も未来もすべてがつまっていて、
その「時」に「今のわたし」は包まれ、生かされている。
そうした実感を思い出す扉として、「沈黙」がある。
ぼくも詩を通して、そうした「時」につながりなおす「沈黙」を、分かち合っていきたいなと、想いを新たにしたのでした。
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そんな「沈黙」をあなたと直に分かち合う試みとして、早速この秋にトークイベントと朗読ライブを企画しています。
実は3つもありました…!
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① 9/14 トークイベント『わたしの本をつくる』@横浜・妙蓮寺 & オンライン配信
② 10/7 朗読ライブ『風のはじまるところ in 京都』@一乗寺・喫茶点線
③ 10/26 朗読ライブ『風のはじまるところ in 東京』@ 三軒茶屋・Twililight
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① のトークイベントは、タイトルそのまま、自己表現として自分の本をつくってみたいあなたに向けて、実際に本をつくってみた僕と画家・奥誠之さん、そして編集・三條陽平さんの三人による対談です。
自分の本をつくってみたいあなたにとっては、具体的な本づくりのイメージと楽しさに触れられる時間になると思いますし、
自分の手で何かを創作している / してみたいあなたにとっては、創作の日々のヒントにもなるはず。
画家・詩人・編集者というユニークな組み合わせの対話が、どんな広がりを見せるのか、僕自身も今からとっても楽しみです。
詳細・申し込みは、こちらのページからどうぞ。
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② と ③ の朗読ライブは、申し込みページ公開前のもの。このお便りを受け取っていただいているあなただけへの、先行情報になります。
書きながら震えてしまうほどなんですが、ご一緒させていただく音楽家の方お二人、やばいんです…。
京都の方では、世界的にもファンの多い、アンビエント音楽の北航平さん。最新のアルバムも最近出されたばかりですが、詩を音楽にするってこういうことだろうと、初めて聴いたときからずっと心を撃ち抜かれ続けています。ぜひURLのspotify、聴いてみてください。
東京の方では、坂本龍一さんとも一緒に楽曲を制作されたり、様々な映画音楽も担当されてきた sawako さん。実は学生時代にひょんなきっかけでお会いしたことがあったのですが、東京で朗読ライブをする時には、恐れ多くも、ぜひご一緒したいと夢見ていた方でした。
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北さんも sawako さんも、いち表現者として完全にレベル違いの大先輩なんですが、駆け出しの詩人、お二人の大きな器に甘えて、思い切りよく共作パフォーマンスを楽しみたいと思います。
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まだ申し込みページがオープンになっていないので、参加ご希望の方はこのお手紙に返信する形で情報いただけたら、席を押さえさせていただきますね。
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■ 10/7(土)「風のはじまるところ in 京都」二部制
◯ 昼の部
open:15:00 start:15:30 close:17:00
◯ 夜の部
open:18:30 start:19:00 close:20:30
◯ 会場:喫茶・点線(一乗寺駅から徒歩1分)
◯ 参加費:3,500円
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■ 10/26(木)「風のはじまるところ in 京都」
◯ open:19:00 start:19:30 close:21:00
◯ 会場:twililight(三軒茶屋駅から徒歩5分)
◯ 参加費:3,000円程度(これから決めるところでした)
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詩の朗読と、詩をイメージした即興演奏。
あなたの内側にある「ほんとう」を思い出す時間になったら嬉しいです。
参加ご希望のかたは、こちらのメールに以下の情報を添えてお返事くださいね。
・参加希望する方のお名前
・メールアドレス(複数人参加の場合は、代表お一人でOK)
・参加希望するお日にち
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以上、3つのイベント情報でした。
横浜・京都・東京、そしてこのお手紙で、また来月お会いしましょう。
9月、秋のあたらしい風にからだを浸して、お互いすこやかに過ごしましょうね。
あなたの今日が、美しい一日になりますように。
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― まないより
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p.s.